ANS.のインタビュー連載『美容医療のプロに聞く、いま注目の美容法』では、美容医療のプロフェッショナルである医師に、いま注目している美容法について取材。ユーザー様の肌悩みのアンサーの一つとなるような情報をお届けします。
今回お話を伺ったのは「みやびクリニック 矢加部 文先生」
みやびクリニック 院長 矢加部 文先生
血糖値スパイクは肌老化を招く
ーー矢加部先生が、美容や健康のために気をつけていることを教えてください。
血糖値スパイクを起こさないことを強く意識しています。血糖値スパイクとは、食後の血糖値が急上昇・急降下する現象です。
若い頃から食後に急激に眠くなったり、気怠かったりという症状に悩まされていたため調べたところ、体内で激しい血糖値スパイクを起こしていたことがわかりました。血糖値スパイクはさまざまな病気の原因になるといわれているため、できるだけ血糖値を上げないよう心がけています。
気をつけていることとしては、空腹時にいきなり糖質を入れないことです。食事は、野菜などの食物繊維、肉・魚などのタンパク質から食べ始めて、その後にパンやご飯などの炭水化物を食べるように意識しています。おやつは、タンパク質が摂れて血糖値が上がりにくい、チーズやナッツ、小魚などに変えるなど工夫しています。
ーー血糖値スパイクを抑えることは、健康だけでなく美容にも影響がありますか?
そうですね。血糖値スパイクをおこすと血管が傷ついてしまうので、肌に栄養が行き渡らなくなってしまいます。また、血液中に余った糖とタンパク質が結びついて「糖化」がおこります。糖化によって体内のコゲとも呼ばれる老化物質のAGEs(終末糖化産物)が生成されると、健康面ではさまざまなトラブルのもとになりますし、美容面ではくすみやシワ・たるみなどが目立つようになり、エイジングが加速してしまいます。
それだけでなく、脳にもダメージを与えるため認知症への影響も懸念されていますよ。
体が健康でなければ、外面の若々しさ・はつらつさは得られません。健康面・美容面のどちらにおいても、血糖スパイクを起こさないように過ごすことは非常に大切だと思います。
ーー血糖値スパイクを防ぐためにも、日々の習慣を見直すことが大切ですね。矢加部先生が、インナーケアとして摂り入れているものはありますか?
アスタキサンチンは抗酸化力が高いので、体内のサビ落としとして摂り入れています。酸化と糖化は密接に関係しているので、抗糖化を意識する上でもアスタキサンチンは重要です。インナーケアだけでなく、化粧品もアスタキサンチン配合のものを使っています。
実はアスタキサンチンは、心機能や体の筋肉パフォーマンス、目や脳機能もよくするといわれていて、循環器や運動の分野、眼科や脳神経領域でも注目されています。さまざまなことに対してアプローチできるので、美容だけでなく、健康面でもおすすめですよ。
ほかにも、免疫力アップのためのビタミンD、体にとって大事な補酵素の亜鉛を摂取しています。亜鉛のはたらきはあまり知られていませんが、不足するとターンオーバーが乱れてしまったり、傷が治りにくくなってしまったりするので、肌のためにも必要な栄養素なんですよ。
レーザー治療よりもスキンケアの見直しを
ーー矢加部先生が今、注目している美容施術はありますか?
「肌育」です。針を刺して真皮に栄養を与え、肌を鍛えていく施術です。水光注射、メソガンのような機械は以前からありましたが、ここ数年でさまざまな薬剤が登場しているので、注目しています。
最近では、トライフィルという針を刺すと同時に炭酸ガスを注入して、針の周りに空間を作って薬剤を入れる機械がお気に入りです。ニキビ痕・クレーターのような瘢痕化した部分の治療ができますし、毛穴の治療にもおすすめしています。美肌モードもあるので、肌の症状に応じて薬剤をチョイスし、オーダーメイドの治療ができますよ。
ーークリニックに来院される患者さまは、どういった肌悩みを抱えている方が多いのでしょうか。
シミ・肝斑にお悩みの方が多くいらっしゃいます。シミや肝斑は、肌をゴシゴシ擦らないことが何よりも大切です。そのため、当院ではいきなりレーザー治療を行うことは少ないです。肌をゴシゴシ擦ってしまう習慣が直らなければ、どんな治療をしても水の泡になってしまうからです。
3ヶ月間、摩擦レスのスキンケアを実践してもらい、習慣化していただきます。肌に触れる時は、赤ちゃんの肌や宝物を扱うように、優しく触れてくださいとお伝えしています。
肝斑の場合、トラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEの内服を処方することもあります。当院では、トラネキサム酸は3ヶ月を目安に服用いただき、その後はトラネキサム酸配合の化粧品に切り替えていただくなど、患者さんに合わせて提案しています。
スキンケアの見直しと内服薬で、肝斑の8〜9割の方は改善するため、当院で肝斑のレーザー治療をする人は少ないです。肝斑ではないシミの場合は、レーザー治療ですっきり改善できますよ。
美しさと若さの基本は「健康」
ーー矢加部先生が医師を目指したきっかけを教えてください。
子供の頃、マンガ「ブラックジャック」を読んだ影響で、外科医になりたいと思いました。外科医を目指す多くの人に当てはまる“あるある”ですね(笑)。
長崎大学で学び、形成外科が口唇裂や多指症、頭蓋早期癒合症などの先天奇形の手術や、頭頸部がん術後や乳がん術後の機能再建の手術を扱うことを知り、これこそブラックジャックの世界だと衝撃を受けました。講義や実習が最もワクワクしたので、形成外科の道を選びました。
ーー形成外科は美容外科に最も近い分野ですが、美容外科に進んだきっかけはありますか?
私は幼い頃からぽっちゃりしていてニキビもひどく、からかわれることも多かったため、容姿にコンプレックスがありました。高校生の頃にダイエットが成功して自信がついた経験から、「患者さんのコンプレックスを治療で改善すれば、その人も自信を持つことができ、人生が変わるかもしれない。そのお手伝いができるのが美容医療なのではないか」と考えたのです。先輩からの助言もあり、形成外科の専門医を取ってから、美容外科の道に進むことを決めました。
今は整形がかなり身近になりつつありますが、私が医師になった当時は、二重整形でさえ噂されるような、整形すること自体を人に知られたくないという時代でした。
でも、一重に思い悩んで家から出られなかったような人が、手術で二重になったことで前向きになり、人生が変わっていった様子を見て、素晴らしいなと思いました。
今はファッションのような感覚で整形される方も多いですが、顔や体にメスを入れるのは実は本当に大変なことです。整形の傷跡修正でご来院される患者さんもいらっしゃいますが、一度入った傷を完全に消すことはできません。
値段が安いから・流行っているからといった理由で気軽に試すのではなく、信頼できる先生と良い関係を作って、人生を一緒に歩んでいくような気持ちで臨んでほしいと思います。
ーー最後に、読者の方にメッセージをお願いいたします。
美しさと若さの基本は「健康」です。病気になると心も病んでしまうし、顔や表情にすべて出てしまうので、皆さんには健康でいてほしいなと思います。
みやびクリニック
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